2023/10/18
vol.29
第6回オルタナティブデータの不動産活用に関する研究会の開催報告
竹田 賢治
不動産戦略アドバイザー
日鉄興和不動産株式会社
開催日:2023年10月12日(木)
場所:赤坂インターシティAIRにて、ハイブリッド開催(対面&WEB)
発表者:中西社長、伊達取締役、山元取締役(株式会社データインサイト)
対面参加者:平林孝章(Greenery Japan社長)
コーディネーター:
菊池由美子(JAREC理事長、JLF投資法人監督役員)
村木信爾(JAREC常務理事、大和不動産鑑定)
竹田賢治(JAREC理事、日鉄興和不動産)
【テーマ】
「不動産評価に繋がる新たなオルタナティブデータの可能性と、不動産データの活用事例について
(AI売上予測・賃料査定等)」 株式会社データインサイト 中西社長、伊達取締役、山元取締役
【タイムテーブル】
18:00~18:30 対面参加者の名刺交換ご挨拶Time
18:30~ 研究会スタート
《5分》 トピック紹介:日経記事「電力データの提供始まる、都営住宅AIで空室予測」ご紹介
《80分》 株式会社データインサイト様よりテーマ発表を行うと同時に適時に質疑応答を行う Freeディスカッション方式を実施
冒頭、トピック発表における電力データの情報開示のニュースに寄せて、オルタナティブデータの利活用に貴重な動きを示唆するトークから口火を切る形となった。
現状でのデータ取得可能範囲に留まらず再生可能エネルギーの消費や電送の課題、それらの更なる効率的・効果的な活用方法の検討など、高いレベルでの今後の事業化が期待されるトーク内容でのスタートであった。
今回のテーマでは、「不動産評価に繋がる新たなオルタナティブデータの可能性と、AI売上予測・賃料査定について」という議題で、これまで何度かご紹介頂いた移動データ(携帯等)に加えて、自動ドアのビーコンセンサーやPOSデータ、更にオフィス賃料の実データといった、まさにダイレクトマーケティングの領域にかかわるオルタナティブデータを解析する手法でのAI予測(売上予測、人流予測、賃料設定など)の実用化事例などをご紹介いただいた。
これまでのオルタナティブデータでは捕捉しきれなかった建物内での移動データの厚みを増す取組みに建物のプロパティーマネージャーが反応するであろうポイントまで話が及び、こちらも実用化への更なるレベルUPにつながる活発な質疑応答が展開された。
また、賃料査定のデータ補足に関する課題等については、不動産のプロからは大前提となっている、不動産業のノウハウやポリシーといった点にも言及があり、データとしての有用性の捉え方や取得方法・使い方のポイントなどから不動産鑑定やマーケットデータの見方へと、オルタナティブデータからのアプローチでは見えにくいポイントが具体的にディスカッションされ、この研究会のディスカッションが、実務的な側面を帯び始めているとの感想を抱くものとなった。
特に「すまいマップ」が持つポテンシャルには目を引くものがあり、自身としても是非とも事業化を検討したくなるようなものであった。
今回の研究会で、データインサイト様がお示しになられたデータと不動産の結合点を探る動きについての感想に近いものになるが、新たなものを生み出すために、保有データの制約にとらわれるのではなく、自らの発想や課題解決を実現化するために、目指すべき姿を想定して、必要な情報を収集するというアプローチに、「事業化への近道」を垣間見る感覚にもなった。
特に商業立地の分析について、オルタナティブデータからのアプローチからのみではなく、自身がそこに赴き、歩き、街と触れ合うことで、データでは測れない人の営みを解析に加えていくという行動に、不動産のプロから見ても学ぶべき原点を思い起こさせられた。
前回のDMO(観光地域づくり法人)からのアプローチに、今回のデータインサイト様のアプローチを交錯させることで、より実効性の高い・スピード感のある観光事業(=行政施策)が生まれるような可能性をも強く感じることとなった。
今回は不動産Valueを測るためのアプローチが論点となり白熱の議論が展開されましたが、不動産Valueの本質の一つは、「人が利活用することでその価値が変わる(上下する)」との視点が共有化されたと感じた。
今回は簡単にしか触れられなかったが、POSデータを取り込むことで、地理的に限定されたと思い込んでいるエリア戦略についても、新たな視座が得られるような取り組みなのではないでしょうか。
今後も不動産価値向上に資する、活用が期待される「データ」のリスト拡充=研究会を行います。