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2024 04/01
コラム
「人流・物流と地域格差」(佐賀は東高西低)

2024/04/01

vol.32


 

 「人流・物流と地域格差」(佐賀は東高西低)

 


福田 勝法
不動産鑑定士・不動産カウンセラー・不動産戦略アドバイザー
不動産カウンセラー協会常務理事・国際委員長
株式会社 鑑定ソリュート佐賀

 

 

佐賀県の東部に所在する鳥栖市の大型アウトレットモール「鳥栖プレミアム・アウトレット」が20周年を迎えた。鳥栖市の観光拠点として、近隣の福岡、長崎、熊本等国内やインバウンドの集客により、累計の延べ利用者数は約9,500万人に上り、佐賀県の全人口約793千人が一人当たり約120回訪れたことになる。

鳥栖プレミアム・アウトレットは2004年3月12日に、御殿場(静岡)、りんくう(大阪)、佐野(栃木)に続く国内4カ所目として開業した。立地条件が都市部から一定の距離が有り、アクセスが良い土地(九州・長崎・大分自動車道が交差する鳥栖ジャンクションを有する交通の要衝)として出店戦略に合致、車社会に対応した約3千台収容の駐車場も整備された。

開業時は、店舗面積1万8,400㎡、94店舗であったが、2007。2011、2019年に増設され、現在は店舗面積3万1,470㎡、170店舗となっている。売り上げもオープン時の約136億円から、コロナ禍前の2019年度は約326億円とピークで、2022年度は約273億円とインバウンド需要の回復期を反映している。

鳥栖市は高速道路のジャンクションや九州新幹線(2011年3月全線開業)、鹿児島本線、長崎本線等の交通網が整備され、特に、一大消費地福岡県に隣接する地理的特性から物流拠点としての需要が強く、古くは鳥栖商工団地、最近はグリーン・ロジスティクス・パーク鳥栖(開発面積約68ha、卸売業 道路貨物運送業 倉庫業が立地、2015年1月完売)、また、新産業集積エリア鳥栖の約27haのうち、約21haにアサヒビールの鳥栖工場の進出(2026年1月に操操業開始予定)も決まり、物流、製造業の立地が進み、地価公示や地価調査の工業系の地価変動率は全国で上位5番内に入る大幅な地価変動を示している。

一方、佐賀県の西部に位置する伊万里市や有田町は、江戸時代からの伝統を継承する大川内山の色鍋島、人間国宝を輩出する酒井田柿右衛門、今泉今右衛門、井上萬二等の陶芸が盛んである。有田町で毎年ゴールデンウィークに開催される有田陶器市(1896年の陶磁器品評会が始まり)には、佐世保線の有田駅、上有田駅(開催期間中特急「みどり」「ハウステンボス」が臨時停車)の鉄道利用や西九州自動車道波佐見有田ICからの高速道路により、人出は九州を中心に、1週間で全国から約120万人が訪れ大いに賑わう。ただ、近年は1997年の「世界炎博覧会」をピークに、下表のように販売額は約4分の1、商店数は約2分の1、従業員数は約3分1に激減している。

伊万里市は1951年に重要港湾の指定を受けた伊万里港(江戸時代は色鍋島等の古伊万里の積み出し、昭和の初期から30年代にかけては、石炭の積み出し、石炭産業の衰退後は、産炭地域振興計画の中で工業開発の拠点で、日本海側拠点港でもある)は、伊万里湾の湾奥部に伊万里団地(約120ha)、七ツ島工業団地(約148ha)等工業用地の造成、公共ふ頭の整備が行われ、コンテナターミナルを備えた臨海型の特性を生かした企業立地が進められた。熊本のTSMCの投資規模には遠く及ばないが、最近ではSUMCOが山代町の久原工場の隣接地に新工場を増設(2015億円を投資し、500~600人を新たに雇用)予定である。

以上のような社会経済状況を反映し、地価公示や地価調査の工業系の地価変動率は伊万里市が3年前から上昇に転じたが、構造不況業種である陶磁器業が主産業である有田町は依然として下落傾向に歯止めがかからない。

また、伊万里市や有田町は、人口・世帯数ともに減少傾向で、高齢化率も老年人口割合も佐賀県平均を上回っている。県東部地区の鳥栖市等が人口・世帯数ともに微増傾向にあるのと比較し、過疎化、高齢化の地域経済に与える影響は大きく、今後も、東高西低の傾向(地域格差)は続くものと思われる。

「有田町の陶磁器販売額、商店数、従業員数の推移」

 

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