12月4日(金)午前10時30分からJAREC主催の第13回不動産戦略アドバイザー認定及び継続研修の第一部としてトピック講座「人フォーカスの時代へ~都市・建築・働き方はどこへ向かっているのか~、~コロナ後のオフィス・ワークプレイスの在り方~」と題して、ファシリティデザインラボ代表の似内志朗(にたないしろう)氏を講師にお迎えして、コロナウイルス感染症に対する十分な感染対策のため、リアル受講の人数制限を行い、リアル受講とWeb(Zoom配信)で開催いたしました。
似内氏は、郵政省に入省、⽇本郵政株式会社で建築設計・FM・事業開発・不動産開発企画(JPタワー等)を担当されて、2019年に退職し、退職後に世界を旅行されて見聞を広められたとの紹介がありました。
講演の内容
コロナ禍による働き方の兆候(オフィスワーカーのみを対象)
人事制度見直しに着手した企業、企業のファシリティマネージャーの認識についての講演があり、これからの働き方をいろいろ取りざたされている事柄を例示されたうえで、「オフィスの未来に関する調査(不動産協会、ザイマックス総研)」では、キーワードとして①イノベーションが求められる時代に、②テレワークが新しい不動産ビジネスを生む、③本社集約とテレワークのハイブリッドが進む、④すぐれたオフィス環境が都市の競争力を高めるの4点を挙げて説明された。
働き方の変化
企業はファシリティマネジメントやワークプレイスについて、取り組んでこなかったが、コロナ禍で一気にオフィス問題・働き方問題は、企業経営の切実な課題になった。在宅勤務により「閑散としたオフィスの見える化」により賃料について関心が高まった。しかし、高額なオフォスビルに入居している企業では、優秀な人材を確保するため人件費は賃料の約10倍となり、「働く」を中心に、リアルリモートのベストミックスを追求したのちにコンパクト化や高度化を考える順序となっていくことがより良い選択ができると考える。
長期的な「働く」の方向性
21世紀のイノベーション型オフィスとして、「ABW(Activity Based Working)」が重要。オフィス内外の好きな場所で働くことで、生産性・創造性の他、偶然の関わりから思いがけないものを発見することが出来たりする。また、コロナ禍の現在では難しいとされている「三蜜」ではあるが、集まって働く協働・協創、が知恵を生むこともある。さらに、人材の多様性により、個々の違いを認め合い、受け入れることで知恵を生むことができる。
オフィス不要論をどう考えるか
人は基本的に動物であり、リアルな「場」の共有を必要とすると思うし、人が生む価値もコストも賃料よりも遥かに大きいと思う。まず「働く」を追求した後、事務所のあり方を考えるのが良いと思う。今後の働き方としては、「リモートとリアル」のベストミックスを追求することが必要ではないか。
ESG【環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)】とDX(Digital Transformation)【デジタルの技術を用いてどう事業を変革するか】は、「いつでもどこでも」のワークスタイルをリモートとリアルのベストミックスを追求するための道具となる。
ESG/SDGsの時代が始まった
ESGは、金融発の考え方で、世界の投資家たちはサステナブルな事業・社会・環境を実現するために、各国政府や企業に強く働きかけ、コロナ渦中に、世界のESG投資は20%の伸び、日本でも世界の動きに追随するようになった。国土交通省でも不動産ESG投資の検討が始まっている。
ESG/SDGsは、次の時代への生き残り戦略で、新しい資本主義、機関投資家が長期的利益に重点を置きはじめ、ESG投資は急拡大して、世界の「常識」となってきた。この変化は、一時的な変化ではなく、構造的・不可逆的なルールの変化であり、グローバル化の中で、日本が例外とはなりえないと考えている。
この後、ESG及びSDGsの書籍の紹介がなされ、都市、大規模開発の事例として、ロンドンの再開発(キングスクロス再開発にはグーグル欧州本社、バターシ再開発にはアップルが入居予定)の紹介、さらには2019年7月ロンドンが世界初の「国立公園都市」となり、より環境に優しい都市を目指すことを表明したとの紹介があった。
さらに、リアルオフィスの参考として、次の二つの紹介があった。
The EDGE(世界で最もスマートなオフィスビルディング)
EDGE Olympic(WELL 認証プラチナ取得のウェルネスオフィス)
午後には、第二部としてケーススタディ研修が行われましたが、このケーススタディの課題も「ESG」を取り上げた内容で、リアル受講とWeb(Zoom配信)で開催いたしました。
以 上